自分の「なぜ」から始まる探究――AI時代の問いを考える

【教育・探究学習コラム】

教育のニュースや資料を手がかりに、探究の授業づくりに携わる代表・鈴木秀喜が、実践と考えを綴ります。

文部科学大臣は 2026-08-21 、次の「教育振興基本計画」の策定について中央教育審議会に意見を求めました。AIが身近になった今、学校で育てたい「自ら問いを立てる力」も検討テーマに入っています。[文部科学省の発表]

「教育振興基本計画」は、国が教育政策の方向をおおむね5年ごとにまとめる計画です。現在の第4期は2027年度まで。生成AIの普及や人口減少など社会の変化を踏まえ、2028~2032年度の第5期をどうするか、文部科学大臣が専門家らでつくる中央教育審議会(中教審)に検討を依頼しました。これを「諮問」と呼びます。学校で新しい取組を始めることが決まった、という発表ではありません。

諮問文は、AIを適切に使う力と併せて、自分で問いを立て学びを深める力、好奇心や粘り強さなどを重視しています。探究や実践的な学び、学校の外へ出て異なる人・環境に触れる「越境体験」も検討の観点です。中教審は今後、基本方針や具体的な施策、実行のための仕組みを審議する予定です。現時点で第5期計画の中身は確定していません。

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問いは、日常の小さな引っかかりから

ここからは、このニュースを読んで私が授業の場面と結びつけて考えたことです。「自ら問いを立てる力」は、特別な研究テーマを思いつく力だけではないと思います。焼津高校の課題研究の初回授業では、いきなり「気になることを調べよう」と求めず、生徒に日常生活と、これまで心に残った授業を振り返ってもらいました。

ある生徒は、通学中に見かける地域の小さな車屋について、「有名なディーラーではない小さな車屋さんがたくさんあるのに、潰れていないのはなぜだろう」とワークシートに書きました。私はその記述に引かれて声をかけました。同じ風景を見ても、どこに引っかかるかは人によって違います。その子自身が立ち止まったところに、探究の入口があると感じます。

先生が渡す言葉も、生徒の様子を見て決める

小さな疑問を大切にすることは、先生が何も教えないという意味ではありません。生徒のペンが動いているか、戸惑っている様子はないかを見ます。活動のイメージを持つために見本を示すこともあれば、考えを待つこともあります。全員に同じ量の説明を渡すのではなく、そのとき必要な言葉を選びたいのです。

AIの答えを、自分で確かめにいく

たとえば「小さな車屋が続く理由」をAIに尋ねれば、もっともらしい説明は返ってくるでしょう。でも、それがこの地域の実態に合うか、自分が納得できるかは、調べたり当事者の話を聞いたりして確かめる必要があります。AIの答えを出発点にはできても、何を問い、何を確かめたいかは生徒自身のものです。

授業の最初に「不思議に思うことは何か」、最後に「まだよく分かっていないことは何か」と尋ねる時間を、いろいろな授業に散りばめたい。小さな「ハテナ」に気づき、自分で答えを確かめにいける授業を、これからもつくっていきたいと思います。

参考資料:文部科学省「第5期教育振興基本計画の策定について(諮問)」/文部科学省「第144回中央教育審議会総会」/文部科学省「第5期教育振興基本計画(令和10年度~令和14年度)諮問の概要」

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