2026.07.30 引佐南部中学校区・合同研修会
活動紹介 | 教員研修

「『問いと理想の間にあるのが課題』という話から、2学期に使うワークシートのイメージがわきました。」
研修後、参加した先生からいただいた言葉です。
探究について学ぶ研修は、話を聞いて「なるほど」で終わると、教室に戻った瞬間に少し遠い話になってしまいます。今回は、先生方自身が探究のいろんな活動を実際に体験する時間を大切にし、現場へとつながるようにしました。
小中学校の先生方と、これからの探究を考える
浜松市立引佐南部中学校区の小中学校の先生方を対象とした夏季合同研修会で、講師を務めました。3小学校、1中学校の合同開催で、参加者は64名ほど。
今回のテーマは、学校で取り組む探究的な学びを、授業や日々の関わりにどうつなげるか。国の方向性を紹介するだけでは、なかなか理解は進みません。そこで、金指小学校で積み重ねられてきた実践も振り返りながら、「何をそのまま真似るか」ではなく、「どんなエッセンスなら持ち帰れるのか」を先生方と考えました。
課題を設定するには?
講義では、AIがどれだけ普及しても、人間が引き受けることは必ず残るとお伝えしました。AIは、情報を探す、整理する、比べる、案を出すといったことが得意です。一方で、「何を解決したいのか」「どの案なら自分は納得できるのか」を選び、現実の反応を確かめながら行動を変えるのは、人間の役割です。

AIは候補を出せる。でも、問いと価値観を選び、納得して決めるのは人間です。
では、課題はどのように設定するのでしょうか。
出発点は、目の前の状態を「これは困りごとだ」「何かおかしい」「もっと知りたい」と捉えることです。
困りごとに気づけば、課題は自動的に決まってきます。
①現状の困りごとを「問題」として捉えます
②「本当はどうなりたいのか」という理想を描きます。問題の反対を想像するとよいです。
③その問題と理想の間を埋めるために、何に取り組むのか。それが課題です。
たとえば、「朝起きられない」という困りごとがあったとします。
その場合理想は「早く起きること」。
するとそのギャップを埋めるための課題は「どうすれば早く起きれるだろうか」です。
このように、困りごとが見つかれば自然と課題(=クエッション)が生まれます。
しかし、課題設定はこれでおわりません。
原因を探り、より深い課題を見つけないと問題を解決できないからです。
例えば、「寝る直前に何をしている?」「一日の中でストレスを感じている?」「眠れない原因はほかにある?」と問い直してみます。
すると、「寝る直前までYouTubeを見ている」という、より具体的な問題が見えてくるかもしれません。
そこで、理想を「YouTubeを見ないで寝て、朝スッキリ起きる」と置けば、「寝る前のYouTubeの時間を減らすにはどうしたらよいだろう?」といった課題が見えてきます。
実際には、行動を記録する、家族や友達に聞く、通知を切る、スマートフォンを別室に置くなど、進み方はいくつもあります。試してうまくいかなければ、問いや課題へ戻って考え直せばよいのです。

問いが変われば、集める情報も、会う人も、次の行動も変わります。探究は一本道ではありません。行きつ戻りつしながら、ぼんやりしていた困りごとを、自分が動かせる具体的な課題へと洗練していきます。
発散する、選ぶ、次へつなぐ
ワークショップでは、設定したテーマについて問いをできるだけ多く出し、グループで見比べ、これから深めたい問いを選びました。記録する人は手を止めずに書き、ほかの人は思いついたことを次々に話す。まずは、考えを広げることに集中します。
今回のテーマは「引佐の今とこれから」に設定しました。
問いをあげようとしても、意外と「引佐って〇〇がないよね~」という現状を列挙したり、それについて話し込んだりしてしまいます。そこをぐっと我慢して、今までの各校での体験・ご自身の生活体験を振り返り問いを出すことに集中していただきました。
問いを持つことは=「自分の興味の所在に気づくこと」になります。これが単元の初期フェーズ、何かを体験したり、講話を聞いたり、映像を見たりした後に行うと、自分自身が何に気になっているのか、仲間はどんな視点をもっているのかがわかり、探究していきたいことにつながります。
慣れていないと問いをつくることは簡単ではありません。しかし、問いをつくる場面を定期的に設定していくことが、この問いをもつ力(不思議がる、面白がる等)を育んでいくのだろうと考えています。

互いの問いを聞き合いながら、ワークシートに考えを書き込みました。
先生方の声
「問いの大切さに気付くだけではなく、ワークショップで具体的に対話できたので、今後のイメージがつきました。」
「問いと理想の間にあるのが課題だという話から、2学期に使うワークシートのイメージがわきました。」
「元国語の先生ならではの、分かりやすく印象的なお話で、あっという間の時間でした。」
最後の言葉は少し照れますが、難しい言葉を現場で使える言葉へ翻訳することが実際できたこと、とても嬉しく思います。
また、研修が「よい話だった」で終わらず、2学期のワークシートや子どもへの声かけに姿を変えていく。その兆しを先生方の言葉から感じられたことが、何よりうれしかったです。
おわりに
問いが、教室で動き出すとき
探究は、成果物を作ることや課題を解決することだけがゴールではありません。正解のない課題について、相手の声を聞き、情報を集め、自分で考えて動き、失敗やフィードバックをもとに改善する。
その過程で、子ども自身が「自分は何を大事にしたいのか」「何が得意で、何に関心があるのか」に気付いていきます。それこそ「自己の在り方」につながる活動であり、探究活動をやる意味だと思います。
ご参加くださった先生方、そして研修の準備と運営にご尽力くださった皆様、本当にありがとうございました!
