学校・企業・地域と取り組んだ授業やイベントを、現場の様子とともに紹介します。
実施日: 2024-09-26 「総合的な学習の時間」における探究的な授業づくり実践研修
静岡県教育委員会が主催する研修で、探究的な授業づくりについて講義と演習を担当しました。会場は掛川市の静岡県総合教育センター。小学校・中学校・特別支援学校の先生方を対象に、「探究学習の概観をつかみ、授業づくりのヒントを得る」ことをゴールに据えました。
解決策を急がず、相手の困りごとを知る
当日のスライドでは、バイパス近くのカフェで、朝の渋滞前に立ち寄るお客さん向けの新メニューを考える例を使いました。先生方にも、まずお客さんをもっと知るには何を尋ねるか考えていただきました。どこに住み、どこへ通勤し、朝食で何に困っているのか。スライドでは、渋滞中に朝食を食べたい一方、車内でサンドイッチを食べると仕事着を汚すことがある、という設定を示しました。
先生方からは、ホットドッグは?ドライブスルーで変えるのがいいかな?などいろんな案がでました。
私が解答例として提案したのは、片手で持てて腹持ちや栄養も考えられるスムージーです。
新メニューありきではなく、相手の困りごとから解決策を組み立てる流れが大事とわかると、探究学習の情報収集の意味合いも変わってきます。
この視点を体験する後半の演習では、私の家族が県内で1泊2日の旅行をするという設定で、先生方に旅行先とプランを考えていただきました。家族の状況や希望を手がかりに、候補地の強み・弱み、チャンス・ピンチをSWOT分析のワークシートで整理します。場所の魅力を並べるだけでなく、「この家族にとってどうか」を考える演習です。
探究サイクルの「2周目」を見据える
探究は、課題を設定し、情報を集め、整理・分析し、まとめ・表現する過程を繰り返します。相手を知って一つの提案をまとめた後、どうすれば次の問いや改善につながるか。これが授業づくりで難しい「2周目」です。研修では、活動を始める前に、その先の展開を頭の中や同僚との対話でシミュレーションすることを提案しました。
先ほどのカフェの例なら、スムージーを提案して終わりにはしません。カフェに協力してもらって販売し、反応を受け取る。あるいは商品紹介のチラシを保護者に見せ、買いたいと思うかを尋ねる。スライドでは、こうした次の活動案を示しました。結果や店長からの意見を手がかりに改善策を考えれば、次の課題が生まれます。その際、誰かにテレビCMを打ってもらう案だけでなく、自分たちでチラシを配るなど、実際に試せることへ目を向ける。こうした試行錯誤を子どもから奪わないという授業づくりの視点として、「失敗の機会をつくる、失敗の機会を奪わない」と伝えました。
子どもが「自分ごと」にできる三つの手がかり
子どもが「自分ごと」に感じるために、授業づくりのポイントとして示したのは
- ①できそう・できたという実感
- ②ゴールの見える化
- ③現状を深く知ること
の三つです。
たとえば、課題に役立つ自分の力を洗い出し、毎時間の振り返りには何をしたかに加えて、面白かったことや迷って選んだことも残す。長期のゴールには単元計画や成果物のイメージを、目の前の活動には見本を示す。
体験・訪問・講話など、現実に近い情報に触れる機会も発想の手がかりになります。
参加者の振り返りから
研修後のアンケートでは、地域学習でも相手を具体的に想定して困りごとを調べたい、発表後の次の活動まで見通して計画したい、といった実践への考えが記されていました。演習を通じて考える過程そのものに面白さを感じたという趣旨の記述もありました。一方で、自校にどう持ち帰り、授業に生かすかを考えたいという声もありました。
今回の研修では、先生方自身が相手を想定して考える時間を置きました。探究のサイクルを説明するだけで終わらせず、相手を知り、試し、受け取った反応からもう一度考える流れを、授業づくりの手がかりとして持ち帰っていただけたらうれしいです。
